北条司氏原作の「シティーハンター」は、1985年「週刊少年ジャンプ」で連載開始した累計発行部数5,000万部を超える大人気コミックで、2019年に新作劇場アニメ映画とフランス実写版映画が好評を博す中で2020年には35周年を迎え、国や世代を超え今でも多くの人々を魅了し続けている作品です。この傑作ハードボイルド・コメディの初の舞台化に、新トップコンビ彩風咲奈・朝月希和を中心とした新生雪組が挑戦いたします! 新宿を舞台にスイーパー(始末屋)として生きる“シティーハンター”こと冴羽獠。彼が依頼を請け負うのは、美女絡みか、依頼人の想いに“心が震えた時”のみ・・・・。 獠の持つハードボイルドかつコミカルな魅力を、彼を取り巻く個性的なキャラクター達の活躍と共にドラマティックに描きます。 様々な魅力が凝縮された宝塚歌劇版『CITY HUNTER』にぜひご期待ください!!(追記:雪組公演 『CITY HUNTER』『Fire Fever!』 | 宝塚歌劇公式ホームページ)
まさかの宝塚版シティーハンターですよ
シティーハンターといえば僕が10代のころから読んでいた漫画。北斗の拳だのドラゴンボールだのジョジョだの聖闘士星矢だの魁男塾だの、とにかく綺羅星の如く人気漫画が揃った黄金時代のジャンプに連載されていたマンガですよ。もう35年ぐらい前か。
まさかまさかの宝塚で○っこりとは。
(まあ「すみれコード」なる乙女縛りがあるそうで、○っこりは「ハッスル」に言い換えられてましたけど)
いや、そこよりも、そもそも宝塚のメイン顧客である淑女のおばさま方、○っこりどころかシティーハンターが何かもよくわかってない気がするんだけど、大丈夫なのか。
実際今日同伴しましたうちの母堂と叔母様は全く予備知識なしで(まあアニメが原作というぐらいの知識はあったようですが)観劇してましたが。
キャラが頭に入ってないと人間関係が入り乱れすぎてわからんと思う
かくいう僕もシティーハンターは数十年ぶり。全く脇の登場人物を覚えてません。うっすら記憶にあるのは主人公の冴羽獠、槇村香と、海坊主、ぐらい。
で、とりあえず今回のキーパーソンになる「ミック・エンジェル」が登場する、コミック32巻〜35巻(最終巻)の4冊を買い揃え、予習しました。
ミックエンジェル編の原作ストーリーとメインキャラを押さえた上で、いざ観劇。
ミックエンジェル(ジャンプコミックスより)
ところが・・・
実は今回の宝塚版、どうもミック・エンジェル編をベースにした、オリジナルの脚本だったようで、タダでさえ多い登場人物がさらに膨れて、話についていくのがやっと。
まったく予備知識なく観る人がどこまで人物関係を理解できるのかめっちゃ不安です(笑)
これから見る人は、できればWikiかなんかで登場人物の関係を把握しておくことをおすすめします。
★知っておいたほうがいい登場人物★
- 冴羽獠 主人公。槇村香を密かに愛する。
- 槇村香 冴羽獠のパートナー。冴羽獠を愛する。
- 槇村秀幸 元刑事。冴羽獠の元パートナー。槇村香の兄で敵ジェネラルに殺された。
- ミックエンジェル 冴羽獠のアメリカ時代のパートナー。
- 海坊主 伊集院隼人またはファルコン。元傭兵。喫茶キャッツ・アイの店主。
- 美樹 海坊主に育てられた現相棒。原作では最後に海坊主と結婚する。
- 野上冴子 野上家長女。美人刑事
- 野上麗香 野上家次女。元刑事で現在は探偵。
- 野上唯香 野上家三女。
- 野上警視総監 野上姉妹の父親。
- 海原 神 冴羽獠の育ての親。麻薬犯罪組織のボス。
- ジェネラル 麻薬犯罪組織の幹部。右手が銃器になっている
で宝塚版シティーハンターの感想は
今回が雪組の新トップ彩風咲奈のお披露目公演ということで、かなりみなさん気合入ってました。
ジャンルがコメディなので、どれだけキャストたちが楽しい雰囲気をお客に伝えられるかが勝負だと思うんですが、彩風さんも全力の演技で冴羽獠になりきっていて、他のキャストも十分楽しい雰囲気を伝えられていたと思いますよ。
舞台装置も凝っていて、新宿のアルタを彷彿とさせる大型スクリーンを常置。随時ニュースやイメージ映像、はてはアニメーションを流して、舞台の演技とシンクロさせる演出。
冴羽獠が車を運転する場面があるんですが、車のセットの後ろのスクリーンに道路のアニメを流して、冴羽獠が敵の車を銃で撃破する演出なんかあったりで、いろいろ工夫してるなあと感心しました。
海坊主役の縣千(あがたせん)がまたいい雰囲気で、やたら男前でかっこいい。(※)
※ 後半のレビューではまた全く違った雰囲気でオーラ出しまくってました(思わずあれ誰やろと双眼鏡で追っかけてました)。今回の観劇ですっかり縣千の贔屓になってしまいましたよ。
ただ惜しむらくは、登場人物が多いため人間関係の描写が薄く、一見して誰がどういうポジションなのかよく理解できない点(ストーリー自体は他国のお姫様を助けるという単純なものなのですが)。
例えば原作のキモとも言える冴羽獠と槇村香の切ない恋愛関係の描写。もうちょっと丁寧に描かれていたら、感動も大きかったかもしれない(実は原作のその後では槇村香は亡くなってしまうのです…)。ただ、あの尺ではちいと無理かなあ。
あと冴羽獠と海原神の悲しき親子関係も原作ではじっくり描かれてますね。
それとエンジェルダストも原作ではかなり重要な役割を担うアイテムなんですが、本作では添え物程度。
とまあ、たくさんの原作の要素を詰め込んではいるので、原作を完璧に把握している熱心なファンは大喜びするかもしれませんが、一見さんや往年のファンにとっては逆にわかりづらくなったかも。
むしろ、原作通り冴羽獠とミックエンジェルと槇村香の三角関係を軸にストーリーを作ったほうがわかりやすくて感動も大きかったかもしれない。
まあ宝塚はストーリーは二の次ですから
とはいえ多少ストーリーがわかりにくくても全く問題ないです。 なんといっても宝塚はスターがかっこよくてなんぼの世界なので。
その意味では彩風さんの全力の演技は気持ちいいし、十分かっこいい。 二番手朝美絢は相変わらず美形だし。 今回は縣千というお気に入りスターも見つけたし。
あと、あれです。いつものことですが、新人さんのロケットは親目線で観てしまうので、思わず涙腺が緩むし。
そんなこんなで、総じて良かったです。 こんな難しい題材を女性だけで舞台化しただけでも立派なもの。
ちなみに、男役さんたちの演ずるヤクザ組員がなかなかよかったんで、いつか宝塚版「仁義なき戦い」とか「孤狼の血」も観てみたいなあ(笑)。
劇中TM NETWORKの「Get Wild」が流れると、イントロだけでも懐かしさに涙腺が緩みますな。